正岡子規をはじめ、多数の著名人を輩出

代々受け継がれる“みがく” 教育が魅力の「松山市立番町小学校」

愛媛県松山市の、中心部にある「松山市立番町小学校」。市庁舎裏に立地し、松山の二大商店街である「松山銀天街商店街」、「大街道商店街」を含む松山市の中心市域が学区内で、全学年2クラスの伸び伸びとした教育環境が魅力の小学校だ。今回は尾脇康資校長先生に、小学校の教育内容や地域との関わり、周辺環境の魅力などについて幅広くお話を伺った。

正岡子規の像と句碑が迎えてくれる
正岡子規の像と句碑が迎えてくれる

教育活動の根底は“みがく”

――長い歴史のある番町小学校ですが、学校の歴史を教えてください。

尾脇校長先生:松山市立番町小学校」は、本年(2022年)で135周年の歴史を誇る学校です。はじまりは、1872(明治5)年に設立された巽(たつみ)学校、勝山学校、智環(ちかん)学校です。これらが、1885(明治18)年に勝山学校に合併され、その後1887(明治20)年に温泉郡外側尋常小学校として設立されました。この年を本校の創立年としています。1929(昭和4)年4月に松山市番町尋常小学校と改称され、同年8月に現在の場所に校舎が移転されて、今に至っています。

「松山市立番町小学校」 尾脇校長先生
「松山市立番町小学校」 尾脇校長先生

――どのような教育方針をお持ちですか?

尾脇校長先生:本校の教育活動の根幹にある言葉が、ひらがな三文字で「みがく」です。各教室の前面にも額に入れて掲示しています。一般的には「掃除、きれいにする」などのイメージがありますが、ほかにも「努力して高めていく」という意味があります。それを具現化するために、教育計画やグランドデザインには、3つの「みがく」を示しています。

先生たち向けの教育計画と保護者向けにはグランドデザインを出している
先生たち向けの教育計画と保護者向けにはグランドデザインを出している

1つめは「こころをみがく」、2つめは「からだをみがく」、3つめは「あたまをみがく」です。昔から「智・徳・体」と言われていますが、今の時代は特に「心」の教育が大事だと考えています。健全な心が育成され、健康な体が宿り、はじめて学習もしっかりできると思うからです。従って本校では、「徳・体・智」の順番に言葉を並べています。この3つのバランスが取れた子どもたちを育成していくことが、本校教育の目指すところです。

――様々な体験授業を実施されていらっしゃいますが、具体的にはどのような内容でしょうか。

尾脇校長先生:学年ごとにテーマを設定して行っています。1年生は地域のお年寄りと昔の遊びを通しての「交流体験」、2年生は番町校区内を巡る「まち探検」、3年生は「地球環境」を考える学習として本年度は「ネッツトヨタ愛媛」と連携し「種取りプロジェクト」に取組みました。

4年生は目の不自由な方や義足の方にゲストティーチャーとして来ていただき「福祉体験」を、5年生は「環境・SDGs」をテーマにトヨタ出前教室を実施し、水素自動車「未来」への試乗などを行いました。6年生は「平和学習」を兼ねた修学旅行の事前学習として、「広島平和記念公園」や「原爆ドーム」について調べました。どの学年も、普段の学習では決してできない体験的な活動を通して、自ら学び、生きて働く力となる学習を行うことができました。これらの活動が、学ぶ意欲の向上にもつながったと思います。

――「ドリーム音楽会」という取り組みもあるとうかがいました。どのような行事でしょうか。

尾脇校長先生:ドリーム音楽会は、全学年が日頃の音楽学習の成果を保護者や地域の方に披露する貴重な機会です。今年度はコロナ禍のため、練習時間を削っての開催となりました。音楽の時間だけでなく、休み時間にも子どもたちが自主的に練習し、本番では素晴らしい演奏を披露してくれました。観てくださった方々から、歌声や合奏はもちろん、子どもたちの表情もとってもよかったと言っていただきうれしかったです。

正岡子規に学ぶ、俳句学習

校長室には晩年の正岡子規の写真が飾られている
校長室には晩年の正岡子規の写真が飾られている

――正岡子規さんをはじめ多くの著名人が卒業されていらっしゃいますが、そういったことを生かした学びの場などが提供されているようでしたら教えてください。

尾脇校長先生:正岡子規さんは、番町小学校の前身である勝山学校時代の卒業生です。4年生の社会科では、地域の偉人として正岡子規さんを取り上げて「調べ学習」をしています。

新型コロナウイルスの影響で、昨年度・今年度と中止になっていますが、2年前までは「のぼさんと遊ぼう秋祭り」というイベントに4年生が参加し、「子規記念博物館」の前で餅つきをしたり、「道後商店街」をパレードしたりしていました。ぜひ来年は復活してほしい地域行事です。

また、全校的にも「子規顕彰記念俳句大会」をはじめとする各種の俳句コンクールに応募するなど、俳句に親しむ活動をしています。また、正岡子規さんのほかにも、高浜虚子さんや河東碧梧桐さん、柳原極堂さんなどの著名な俳人や、軍人である秋山真之さんや水野広徳さんも卒業生です。

――地域の方と連携して行っていることはありますか。

尾脇校長先生:番町地域からは正岡子規さんをはじめ、著名な俳人が多数輩出されているのを受けて、番町公民館主催で毎年「城山俳句サーキット」という行事を行っています。今年は、講師に「プレバト!!」で全国的に有名な夏井いつきさんの息子さんである家藤正人さんを招いて、俳句づくりのポイントを説明してもらい、「城山公園」を巡って俳句づくりに挑戦しました。

また、本校は昨年度と今年度の2年間に渡り、文部科学省人権教育研究指定校となり、新型コロナウィルスによる差別や誹謗中傷をしないよう訴える「シトラスリボン運動」に取り組んできました。12月には、自分たちでつくったシトラスリボンを市役所や公民館、郵便局、地域の商店などに贈呈しました。

児童たちが手作りしたシトラスリボン
児童たちが手作りしたシトラスリボン

俳句の街「松山」の文化の中心を担うエリア

――松山市エリアの魅力をお聞かせください。

尾脇校長先生:松山市は、気候が温暖で人も温かく子育てにも適した非常に住みやすい街だと思います。特に本校区は松山市の中心部に位置し、官公庁や金融機関、デパートや商店も多く、交通の利便性にも恵まれ、松山の政治・経済の中心をなしています。また、先ほどから出てきている著名な俳人を多数輩出しており、俳句の街・松山の文化の中心を担っているとも言えます。

若かりし頃の正岡子規の像「旅立ち」
若かりし頃の正岡子規の像「旅立ち」

特に正岡子規さんに関しては本校の中庭に若かりし子規の「旅立ち」の像があり、校区内には生家を復元した「子規堂」や、夏目漱石さんと一緒に過ごした「愚陀仏庵」があります。また、句碑も多数残されています。残念ながら愚陀仏庵は、2010年の豪雨災害で倒壊してしまったので、早く再建されることを願っています。

正岡子規の句碑「國なまり故郷千里の風かをる」
正岡子規の句碑「國なまり故郷千里の風かをる」

もう一つ私がぜひ松山エリアでおすすめしたいのが、私のふるさと「中島」です。番町地域とは全く正反対の田舎ですが、きれいな海をはじめとした風光明媚な自然に恵まれ、心が癒される場所です。特産品のみかんは日本一の味と言われており、海の幸も豊富な島です。三津浜港と高浜港から定期船が出ており、中島本島までは高速船直行便で約25分、フェリーですと1時間ちょっとで行けますので、ぜひ訪れて島のよさを満喫してきてください。

代々受け継がれる“みがく” 教育が魅力の「番町小学校」
代々受け継がれる“みがく” 教育が魅力の「番町小学校」

松山市立番町小学校

尾脇 康資 校長先生
所在地 :愛媛県松山市二番町四丁目6-1
電話番号:089-941-1446
URL:https://bancho-e.esnet.ed.jp/
※この情報は2022(令和4)年3月時点のものです。